今月のことば

 
 鐸 声
浄土宗新聞 令和7年11月号より転記
 ◆秋の心地よさは短い。数力月前までの酷暑が嘘のようである。季節はめぐり11月7日には立冬を迎える。

 ◆明治25年(1892)11月、正岡子規(1867−1902)は母と妹をともない総本山知恩院に参ったという。子規はこの年25歳であった。すでに結核に感染していたが、まだ自由に活動していた時期である。家族を京都に案内した幸せな時間であっただろう。この後、子規は俳句に革新をもたらす創作活動を行い34歳で短い人生を終えた。参詣の際に脉まれた句を残念ながら見つけることはできなかったが、当時の不治の病をもった子規は、御影堂にて、法然上人にどのような気持ちで手を合わせたのだろうか。

 ◆知恩院では11月13日・14日の両日、十夜会が古式にのっとり行われる。子規が知恩院の十夜会に参詣したかはわからないが、明治28年には「月影や外は十夜の人通り」と詠んでいる。

 ◆十夜会は、お念仏の尊さを実感し感謝の気持ちも込めておとなえする法要でもある。寒い冬となっても他を思う温かい心を忘れずに過ごしたい。


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