今月のことば |

今月のことば
「鐸 声」 |
浄土宗新聞 令和7年6月号より転記 |
◆大本山増上寺が所蔵する、宋版・元版・高麗版の「大蔵経」約1万2千点が、このたびユネスコの「世界の記憶遺産」に登録されたことは同慶の至りにたえない。 ◆中でも高麗版は奈良の忍辱山園成寺が室町時代に朝鮮半島から入手したもの。柳生(奈良市)に向かう滝坂の道を過ぎた辺り、春日大社の神域にあるこの寺は、縁起によれば鑑真和上の弟子・虚滝上人が開山、阿弥陀堂を建立した小田原(念仏)聖・経源上人を経て発展したと伝える。 ◆応仁の乱で多くの伽藍を焼失したが、足利義政の命を受けた栄弘が圓成寺勧進船で朝鮮半島に渡り高麗版を入手し同寺に伝えた。のちに徳川家康公に献上したことで、圓成寺は寺領を加増され、子院も23を数え隆盛を極めた。 ◆やがて幕末の動乱、神仏分離の時代を経て子院は廃絶したが、近年、山門と浄土庭園を隔てていた県道が付け替えられた。美しい二河白道の庭園と、運慶作の国宝大日如来、本尊阿弥陀如来とともに本堂の南東角にある大蔵経が納められていた一角が、往時を偲ばせる美しい寺である。 |
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