今月のことば

 
 「お念仏を称えて、人問らしさをつくる」
 総本山知恩院門跡 伊藤唯眞
華頂 令和5年2月号より転記
 ◆ かつて仏が住んでいた村(現・滋賀県栗東市上砥山)には、野神さまの祭りがありました。毎年数軒ごとに当番になって、旧暦の五月五日を目標にしてお酒を造ります。1月ぐらいから。一生懸命に麹菌を繁殖させて、野神さまの日には出来上がったどぶろく(濁ったお酒)を村中にふるまうわけです。
 ◆ある年、寒い日がずっと続いたために麹菌がうまく繁殖しなかったことがありました。どうしていいか思いあぐねた当番は、隣町の酒屋さんに尋ねてみると「湯たんぽを桶のまわりにあてて毛布か何かで包んでおきなさい」と言われました。そして「お前さんら、酒は人間が造ると思っているやろ。違うで、酒を造ってくれるのは自然や、人間はちょっとお手伝いするだけのことや」と。教えられたとおりにしたところ、なんとか野神さまの日に問に合ったといいます。
 私たちの人間らしさをつくりあげているのも念仏ではないでしょうか。お念仏を称えれば、心が清まっていく。また、人間の角が取れていったり、他人と仲良くできるようになったりという変化が自然と出てきます。だから、お念仏が私たちの人間らしさをつくっていると言えると思うのです。  
 自然がものをつくってくれる。それと同じように仏さまが人間性をつくってくださる。お念仏を称えるなかにそのような感性を育んでほしいものです。
 
 華頂誌は、毎月本堂に50部置いています。ご自由にお持ち帰り下さい。