今月のことば

 
 「鐸 声」
浄土宗新聞 令和8年3月号より転記
   ◆この冬、樹齢10O年と伝わる境内の紅梅の木を切り倒した。毎春、見事な花を咲かせてきたが、数年前から樹勢が衰え、昨夏の猛暑のせいか、ついに枯れた。檀家さんからも惜しむ声が寄せられた。

 ◆このまま処分するのは忍びない。寺族が「草木染めにしてみる」と言い出した。枝や樹皮を煮出して布を浸すと、赤みを帯びた褐色に染まった。華やかさはないが、実に味わい深い。見つめていると、色彩の奥にあの紅梅が浮かんでくるようだ。

 ◆お釈迦さまは諸行無常を説かれた。形あるものは必ず変化する。しかし、滅びたものが別の形となって生き続けることもある。梅の木は命を終えたが、ありし日の輝きは布に染み込み、新たな命を得た。

 ◆その布で袱紗を仕立てるつもりである。法要のたびに手に取れば、あの梅の木を思い出す。檀家さんも「あの梅ですね」と目を細めてくれるだろう。木は枯れても、縁は続いていく。

◆同時に、切り株の横に若木を植えた。100年後、誰かがこの木を愛でてくれてい ることを願って。  


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