今月のことば

 
 「鐸 声」
浄土宗新聞 令和8年4月号より転記
 ◆「昔むかし……」から始まる物語の多くは、勧善懲悪であった。悪い嵬を正義の味方が討ち負かし、読者は迷うことなく正しい側に心を寄せた。

 ◆現代社会は、正義と正義のぶつかり合いだ。「安全と自由」「伝統と多様性」など、こうあるべきだという願いが強いほど衝突は深まる。誰の正義を採用するのかではなく、異なる思想や立場を抱えたままで共に生きるための手段として、民主主義が育まれてきた。

 ◆政治学者・宇野重規は、訳語となったデモクラシーの語源から民主主義を「人々の力」と言い換え、みんなで考えて物事を解決する行為だと説く。一方で、民主主義そのものが正しいわけではなく、みんなで愚かな決断をする危険もあると指摘する。

 ◆21世紀に向けて浄土宗が掲げた劈頭宣言。前世紀の人間が正義のもとに犯した対立と破壊という負の遺産に対し、自らの至らなさを直視した「愚者の自覚」に立ち返り、「共生」の世界を目指すと誓った。あらゆるいのちは一つに結ばれ、共に生かし生かされている。その思いを、いま私たちはどこまで持ちえているだろうか。


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