今月のことば

 
 鐸 声
浄土宗新聞 令和6年4月号より転記
 ◆4月8日は釈尊のお誕生を祝う灌仏会である。誕生直後に、釈尊が七歩歩いて「天上天下唯我独尊」と表明されたという逸話はあまりに有名だ。
 ◆釈尊が最初に歩まれた七歩には、地獄、餓鬼、畜生、阿修羅、人、天、という六道輪廻の世界、つまり迷いの世界から解脱して、ついには無上のさとりを開く存在であるという意味がこめられているという。
 宗教学者のエリアーデはこの七歩について、釈尊が「誕生と同時に宇宙を超越し、空間と時間を廃棄し」た存在になったことを表していると述べている。誕生にまつわる釈尊の神話的イメージには、釈尊がその後に説かれる教え全体を包含する仏教の立場が凝縮されている。
 私たちの奉ずる浄土の教えでは、時空を超えた存在、輪廻を超克した存在といえば、それはまさに阿弥陀仏のことであり、極楽浄土のことである。私たちは、甘茶を注ぐ、生まれて間もない釈尊の威風堂々たるお姿の奥に、阿弥陀仏のお姿と極楽の荘厳を観るのである。灌仏会にあたり、大恩教主である釈尊に、心からの感謝の誠を捧げたい。
           
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